自治体首長(京都市松井孝治市長)講演会「”突き抜ける世界都市京都”の実現に向けた挑戦」を開催しました
2025.05.26
自治体首長(京都市松井孝治市長)講演会「”突き抜ける世界都市京都”の実現に向けた挑戦」を開催しました。
日 時 : 2025年5月14日(水)16時50分~18時30分
場 所 : 京都大学国際科学イノベーション棟 西館5階シンポジウムルーム
講演概要
【京都市 松井孝治市長】このたびの自治体首長講演会では、京都市の松井孝治市長に「”突き抜ける世界都市 京都”の実現に向けた挑戦」というテーマでご講演を賜りました。松井市長のこれまでのご経歴や政策に対する基本的な姿勢を通じて、現在の京都市が直面する課題とその特有の文化的・社会的資源を活かしたまちづくりについてお話を頂戴しました。当日は、多くの学生、関係者の方々が来場し、市長の熱意あふれる講話に熱心に耳を傾けました。
冒頭では、松井市長のご略歴と主なご業績をご紹介いただきました。高校卒業後、京都を離れ、官僚、政治家、大学教授として幅広い分野でご活躍された後、なぜ市長として京都に戻ることを選ばれたのか、その経緯について、具体的なエピソードを交えながら語られました。ご自身の歩みを「傍流」と表現されつつ、非正統的な視点を大切にしながら取り組んでこられた各分野での成果についても丁寧にご説明いただきました。
続いて、市長の座右の銘である「義理人情と痩せ我慢」についての解説がありました。義理は「社会における道理」、人情は「他者への思いやりと愛嬌」、痩せ我慢は「将来世代のために行動する覚悟」と位置づけられ、この三本柱の精神が、松井市長が考える行動規範である「官を開く、国を拓く、未来を開く」ための礎であるとのお考えを示されました。
その後、新しい「公共」のあり方、そして人が居場所として感じられる社会の構築についてお話いただきました。阪神・淡路大震災発生当時、霞が関にて官僚として復興業務に携わっていたご経験から、国家機構の強さと限界を実感されたと述べられました。そうした経験を通じて、「公共性」は国や行政の専有物ではなく、市民・市場・行政が有機的に連携しながら構築していくものであるという認識に至ったと語られました。その中で、ご自身が制度設計を主導された具体的な取り組みも紹介されました。
講演の終盤では、市長として現在取り組まれている施策と、その中で重要視しておられる「まち柄(まちがら)」という概念についてご紹介がありました。官僚・国会議員としての制度設計に関わるマクロ的な視点とは異なり、首長の職務では、市民が直面するミクロな課題に向き合い、それを街づくりに反映させる視点が不可欠であると強調されました。また、「2050年の京都」の姿を市民とともに構想し、その指針を「まち柄」として定義づけていくプロセスが現在進行中であるとご説明いただきました。
他都市の模倣にとどまるのではなく、京都固有の人的・地理的・文化的資源を最大限に活かし、多様で個性的な人材や伝統文化を継承・活用する(「京都学藝衆」「京都学藝府」)ことで、京都ファンをさらに増やしていく必要があると述べられました。“0.1市民”としての京都市民を大切にし、京都市民に限らず京都に関わるすべての人々が、いかに京都への帰属意識を共有・醸成していけるかを重視されていました。こうした考えのもと、テーマ型コミュニティの形成を目指されているとのことです。
講演の最後には、多数寄せられた質問に対し、予定時間を超えて一つひとつ丁寧にご回答いただきました。質疑応答では、行政運営、企業誘致、共助の仕組み、霞が関での経験と現職への活かし方、説明力の鍛え方、地域コミュニティの参画促進、そして「痩せ我慢」の精神とそれを持つ政治家が増えるためには、といった多岐にわたるテーマが取り上げられました。特に最後の質問への回答では、対立を煽るのではなく、異なる価値観を理解し、折衷していく力を教育やコミュニティ運営の現場から育む必要性についてご指摘され、現代の民主主義を考える上で重要な示唆となりました。
公務で大変ご多忙の中、ご出講いただきました松井市長、厚く御礼申し上げます。
【京都市 松井市長 ご講演の様子】
【質疑応答の様子】
主催:京都大学公共政策大学院
本講演会には大和リース株式会社から京都大学公共政策大学院への寄附金が活用されています。
問合せ先:自治体首長講演会 運営事務局 kyotouniv.lectureseries@gmail.com
⇒過去の首長講演会はこちらから