ごあいさつ
公共政策大学院長ごあいさつ(待鳥聡史公共政策大学院長)
京都大学 公共政策大学院長
(大学院公共政策連携研究部・教育部長)待鳥 聡史京都大学公共政策大学院は、高度な教養と専門性を兼ね備えた職業人の育成を目指して、2006年4月に開設された専門職大学院です。一学年の定員が40名、教員12名という小規模の大学院ですが、これまで600人を超える優秀な人材を各界に送り出してきました。本大学院に所属する教員に加えて、法学研究科・経済学研究科に所属し学界をリードする教員や、行政官やジャーナリストなどの実務経験に富む教員が、多様な授業を担当しています。
今日、私たちの眼前に広がる課題は一層複雑かつ深刻になりつつあります。戦争や新型感染症の流行といった耳目を集める問題だけではなく、地球環境の悪化、世界的・国内的な社会経済的格差の広がり、少子高齢化など、正面から向き合えないまま手遅れになってしまいかねない問題も多く存在します。そのほぼすべてが、単純明快な対応策を導くことは極めて困難な課題です。
そのような局面において必要とされるのが、公共政策大学院での学修を通じて得られる能力です。すなわち、高い倫理観と専門知識に基づく課題発見、広い視野からの総合的な思考による方策の検討、深い理解力と多様なコミュニケーション能力やリーダーシップに基づき多くの利害当事者からの合意調達ができる人物こそが、複雑で深刻な現状に怯むことなく、新しい時代にふさわしい政策を作り出し、未来を切り拓いていけるに違いありません。
こうした能力を有する人材は、中央政府や地方自治体、国際機関のみならず、シンクタンク、NPOやNGO、ジャーナリズム、そして社会的責任が増している民間企業などにおいても、ますます必要とされています。
本大学院はそうした必要性に応えうる人材を育成するために、社会を分析し考察する上での基本的な素養となる科目、実務経験者による具体例に則した実践的な知識を提供する科目、幅広い視野と教養につながる原理的・歴史的知識を涵養する科目、英語によるコミュニケーション能力の開発に資する科目など、多種多様な授業を提供しています。2013年度からは、大和リース株式会社と読売新聞大阪本社による寄附講義を開設し、地域活性化政策プログラムやジャーナリズムの現場への理解をとくに深める機会としています。
少人数教育もまた、本大学院の大きな特質です。授業のなかでの双方向型コミュニケーションはもちろん、単位履修から進路の決定まできめ細やかな指導、適切な助言が教員により行なわれています。学生同士、学生と教員の交流も高密度で自由闊達です。また、社会経験を有しない学生や社会人学生、留学生が研鑽の場を共有することで生まれる刺激も見逃せません。学生が主体となった研究会や政策提言グループなどの自主活動も活発であり、企業心や責任感に富んだ人材を生みだしています。
公共性の高い仕事に就くことを志す強い意欲と向上心をもつ方々が、本大学院でともに学ばれんことを願ってやみません。